子ども達に誇れる大人に

しがNPOセンター

2016年06月10日 11:11

           しがNPOセンター 代表理事
                                 阿部圭宏

 政治家のカネの問題が出てくるたびに、またかとうんざりしてしまう。舛添要一の政治資金問題は格好のワイドショーネタで、連日、おもしろおかしく伝えられている。第三者の弁護士による調査では、公私混同が見られるものの、政治資金の支出には「違法性がない」という結論になったという報告がなされた。

 舛添報道に合わせるかのように、甘利明のあっせん利得問題が嫌疑不十分で不起訴という報道もあった。1月下旬に明らかになった甘利の口利き問題は、あっという間に大臣辞任へと発展し、いよいよあっせん利得処罰法が適用されるかということを言われていたが、結局はうやむやで終わりそうな雰囲気である。

 政治資金規正法やあっせん利得処罰法という法律は、ザル法と言われているが、もともと両法ともに議員立法で成立した法律である。国会は立法機関だが、多くの法律は政府が提案する閣法であって、NPO法のような議員立法は実は例外的である。その少ない議員立法のうち、自らが率先して律するべき根拠となる政治資金規正法やあっせん利得処罰法そのものが、何の縛りにもならないというものであれば、国民の代表たる国会とは一体何なのかという疑問も湧く。

 何も政治だけの劣化をあげつらうものではなく、大企業も同じように心もとない。主だったものだけでも、東芝の不正経理問題、三菱自動車やスズキによる燃費データ改ざんなど、市民の信頼を損なう事例は残念ながらなくならない。

 政治家を選んでいるのは、われわれ市民であることから、われわれにも大きな責任があると思われる。問題企業の商品やサービスを選んでいるのも、われわれ市民である。その意味では、市民が政治家や企業を育てるという意識を持たない限り、日本社会は信頼のおけないどうしようもないものになるのではないかという危機感を持つ。

 もう一つ事例を挙げよう。それは消費税増税の凍結だ。確かに、税金は上がらないことにこしたことはない。しかし、一国の総理大臣が次は絶対上げると言ったものを、簡単にひっくり返すということは、いかがなものか。

 このような大人たちを見て、将来を背負う子ども達にどのように説明するのか。昨年、政府は、学習指導要領の一部改正を行い、これまで教科外活動であった小学校・中学校の道徳を、教科へ格上げした。学校で一所懸命に道徳を教えても、権力を持った大人達の立居振舞を見たときには、これはパロディとしか呼べない。日本という国、社会の仕組みのあり方を、みんなが真剣に考えるべきときである。




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