利益相反
しがNPOセンター 代表理事
阿部圭宏
加計学園の獣医学部新設の問題が一向に収まらない。一国の総理大臣がお友達を優遇して本来公平に行われるべき特区認定を恣意的に歪めたのではないかという疑惑である。すでに国会やマスコミ報道で、多くの点が指摘されている。閣議決定された4条件さえクリアできない案件であったとか、他の大学が参入希望していたのに、後出しじゃんけんで新たな条件が加えられ排除されてしまったとか、当該学園の系列大学で雇用されていた総理補佐官が加計を認めるよう指示したとか、文科省OBで当時の加計学園理事からの働きかけがあったとか、挙げればまだまだ出てくる事態となっている。
規制緩和、規制撤廃が本当に大切なのかという根本的なところにも突っ込んでみたいが、今回は、利益誘導、利益相反という視点からこの問題を考えてみたい。
利益誘導は、政党や政治家が、政権維持や選挙における得票、政治献金など目的に、支持基盤や業界に便宜を図ることとされている。一般的には、各種の手段を用いて合法的に行われる措置と言える。
これに対し、利益相反とは、当事者の間で利益が相反する行為のことである。民法はそれぞれの利益を守るために、一方が他方を代理すること(自己契約)や、同一人が契約当事者の双方の代理人となって,それぞれの代理行為を行うこと(双方代理)は、民法で禁止されている。自己契約の場合は、代理人が自己の利益をはかるため本人の利益を不当に害するおそれがあるし、双方代理の場合は、代理人がいずれか一方の利益をはかり,他方の利益を害するおそれがあるからだ。
今回のことを見てみると、利益誘導面は疑われるものの、まず、考えるべきは、利益相反ということである。政府関係者が政府の立場を使って、学校法人に便宜を図ることは、利益相反ということが言える。政府の決定は、政府だけでなく、国民生活全般に影響を及ぼす行為であることから、公平な判断が求められることは当然である。
規制改革会議の民間議員が、今回の決定に関して、記者会見まで開いて「一点の曇りもない」と言ったことに対して、違和感も感じた人も多いだろう。中でも、学者の顔をしながら大手人材派遣会社の会長は、実際に特区の仕事を受注しているということからも、この発言の胡散臭さを感じざるを得ない。
通常、お友達であれば、疑念を持たれるようなことは絶対にしないものだ。公職者に迷惑をかけないように、在任中はあまり近寄らないものだ。これが真の友達というものだと思うのだが、件の学校法人理事長は、そうでなはなく、利用できるものはとことん利用しようと考えているようだ。しかも、教育を単なる金儲けの手段としか考えていないようにも思われる。学校運営は、これからのこの国の人材を育むものとして情熱を持って取り組むものだが、こんな学校法人ばかりがのさばり、既存の多くの大学が運営に窮していることを思うと未来は暗い。
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