多様な市民的主張が認められる社会

しがNPOセンター

2017年10月02日 10:43

           しがNPOセンター
                     代表理事 阿部 圭宏

  突然の衆議院の解散である。解散権の濫用とか、解散の大義とか、敢えてここでは言わない。この解散劇を通じて、民進党が解体し、解散当初は保守を主張する政党が覇権を争う構図になっている。

  もともと、自民党も多様性を持つ政党であり、いわゆるリベラル派も抱え、国民の様々な意見を吸い取ってきたが、この20年間の政治状況を見ると、確実にリベラルは退潮してきた。1993年の新党ブームで55年体制が崩壊し、その後の自社さ政権を通じて、社民党が凋落していき、2000年の加藤の乱で自民党内リベラル派の威光が弱まった。自民党も清和会政権が続く中で、保守傾向が強まっていく。一方の民主党は、結党以来、確実に議員数を増やしてきたが、保守中道と中道左派が混在する中で政権に就いたことが、今の混乱の始まりとなったような気もする。

  保守政党と言ってもなかなか本質はよく分からない。本来、保守とは、守るべき伝統や文化は守り、社会に本当に必要と認めた場合は熟考の上でじっくり変えていくことを指す
が、そうすると、今の保守を主張する政党は必ずしも保守とは言い切れない。
  保守かリベラルかをイエスかノーかではっきりと分けることは難しい。国家主義か個人主義か、大きな政府か小さな政府か、新自由主義か否かなど、論点はいくつもある。例えば、アメリカとの関係を見てみると、反米なのか親米なのかは保守にもリベルにもいる。日本の場合のリベラルは、憲法観、外交、防衛などを絡ますと分かりやすいかもしれない。

  この数年間の国家主義的傾向が強まる中で、国家のあり方を根本から問い直すべき事項が議論なく強行突破されてきたことは、リベラルかどうかを問わず、多くの市民が反対してきたのは事実として記憶にとどめておく必要がある。特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法といった一連の問題法案が十分な議論もないまま強行可決されてきたことは、市井の人たちにとっても他人事ではない危機感をもたらしたはずだ。

  今回の選挙では、こうした多くの市民の思いを汲み取るリベラル政党の再構築が必要である。確かに、共産党も市民の立ち位置に降りてきて柔軟な姿勢を取っており、市民の共感を呼んでいるものの、まだアレルギーを持っている人もいることから、十分な受け皿となりきっていない。ここになって、リベラル派が新党を作るという話が急浮上しているので、その動向を見守りたい。
  リベラルを再構築して、保守とリベラルとの熟議が進み、多様な市民的主張が認められる社会ができることを期待したい。




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