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Posted by 滋賀咲くブログ at

2013年12月08日

【緊急コラム】あきらめない 忘れない 考える 行動する


〜特定秘密保護法成立したこれから何をすべきか〜

           しがNPOセンター 代表理事
                                 阿部圭宏

 特定秘密保護法が参議院を通過し成立した。本当にあれよあれよという間のことで、2013年12月6日という日を記憶の中にしっかりと刻んでおこう。強行採決という手法はこれまでも繰り返されてきたもので、熟議に重きを置かず、数の論理で突破しようとする者にとっては、批判されようが痛くも痒くもない。ただ、僕が非常に気になったことは、リベラルだと言われてきた宏池会系の外務大臣、防衛大臣、法務大臣が積極的に法律制定に役割を果たしたことだ。多様な意見を持つ人たちを抱え込んでいた自民党がすでにそういう政党になってしまっているという理解を持っておく必要があるだろう。

 そもそも、この法律に道を開いたのは民主党政権であり、例の尖閣ビデオの流出がきっかけと言われている。「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が設置され、その報告書の内容が特定秘密保護法の根幹をなしている。2年以上も前に出された報告書(官邸ホームページで見ることができる)の存在そのものをほとんどの市民が知らされず、マスコミも問題としてこなかった。今回の国会審議を振り返っても、与党との修正協議を進める野党が大半で、法整備そのものに反対する人たちは、政党、国会議員の中には非常に少ないということが示された。そういう政治状況だということをまず前提とすべきと思われる。

 では、法律ができてしまえば終わりなのか。できてしまったことは非常に残念としか言いようはないが、ここは同時代人の主張を参考にしながらこれからのことを考えてみたい。

 まず、東京大学教授の宇野重規は、特定秘密保護案に反対する学者の会記者会見で、行政権が突出し、立法権や司法権が従属してしまい、三権分立という政治の基本的な土台が崩れるのではないかという危惧を表明する。一方、参議院を通ったとしても、それで終わりではなく、憲法違反ということで、この法律を問うチャンネルが残っているので、これからはあらゆる手段を通じて、この法案を廃案に追い込む、長いプロセスが始まったのだと言う。

 また、元検察官の弁護士である郷原信郎は自身のブログの論考「特定秘密保護法 刑事司法は濫用を抑制する機能を果たせるのか」の中で、法案の内容や賛否の論拠などを冷静に分析し、法案成立を止めることはできないだろうと予測している。その上で、「重要なのは法案が成立した後である。法の趣旨を逸脱する、法律家の常識に反する法の運用が行われた場合に、適切な抑制機能を果たし得る刑事司法の実現に向けて、マスコミを含め世の中全体が問題意識を持ち、議論を深めていくべきではなかろうか」と締めくくっている。

 2人の主張に勇気をもらい、この問題は終わりだとあきらめずに、この問題にずっと関心を持ち続けることが大切だと思う。報道によると、ある与党幹部は、「国民から反発を受けるだろうが、年が明ければみんな忘れる」と言ったそうだ。これほど愚弄した発言はない。市民にできることはたくさんある。政府は、法律が成立したことで、1年以内の施行に向け準備を始める。「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準」づくりは直ちに始まり、後出しじゃんけんで出てきた「情報保全諮問会議」「独立公文書管理監」「保全監視委員会」「情報保全監察室」の中身も早晩明らかになってくるだろう。内容のチェックや議員への働きかけも必要だ。

 現在、各地で公開されている映画「ハンナ・アーレント」も示唆に富む。哲学者アーレントが、ホロコーストの責任を問うアイヒマンの裁判に立ち会い、発表されたレポートで批判を受ける。批判を受けながらも信念を曲げないアーレントの力強さ。「思考」の重要性を語るアーレントの姿勢をぜひ見習いたい。あきらめない、忘れない、考える、行動する。 これからの長い戦いを続ける意思、市民の知恵が、民主主義をこの国に真に根付かす原動力となるだろう。
  


Posted by しがNPOセンター at 13:52シリーズ【阿部コラム】

2013年12月03日

特定秘密保護法に市民はどう向き合うか

                    しがNPOセンター 代表理事
                                 阿部圭宏

 政府が本臨時国会で成立にやっきになっている特定秘密保護法。この話を聞くだけで、あまり気分がよろしくない。こんな筋悪の法律がすんなり通るとは思っていなかったが、あれよあれよという間に衆議院を通過し、審議は参議院に移り、政府は今週中にも成立させたいと強引な国会運営を行っている。さすがに、11月末時点でのマスコミの世論調査では、反対が5割を超えるものも出てきており、マスコミも遅ればせながら、やっと声を上げ始めたという状況である。

 法案が上程される前の10月初め時点での各社の世論調査では、産経の8割を筆頭に、軒並み法案への賛成や必要だとする意見は5割を超えていた。どうしてこんな法案に賛意が示されるのか、僕にとっては非常に不思議だった。多くの国民は法案の中身を知らないまま、「国家機密を漏らした国家公務員への罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案は必要か」と聞かれれば、誰でも必要と答えてしまうというのがこの世論調査の結果であろう。法案への反対や慎重審議の要請が増えたということは、やっと法案の曖昧さや危うさが市民に理解されるようになってきたと言える。

 法案そのものは、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義という日本国憲法の三原則を踏みにじるものであり、多くの問題を抱えているが、ここでは、特定秘密の範囲と市民も処罰の対象となっていることに目を向けよう。「特定」というからには、一見、範囲を絞っているかのような感じを受ける。確かに法案別表では、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止として4項目を列挙しているが、これは何も特定秘密の範囲を限定しようとするものとは思われない。現に、「特定」という言葉を冠した「特定非営利活動促進法」(いわゆるNPO法)においては、特定の非営利活動に限定するという趣旨ではあるが、ほぼ何でも対象活動に該当するという運用が実際に行われていることからも、一旦できてしまった場合に、特定秘密が拡大される可能性は非常に高い。

 それに加え、処罰の対象者が国家公務員だけでなく、広く一般市民も含まれることが恐ろしい。法案に賛成している人は、自分には関係ない、自分は与党議員だ、体制側にいるので大丈夫だと思っているかもしれないが、特定秘密かどうかが分からないままに特定秘密に触って、処罰されてしまうことも考えられる。

 個人だけでなく、市民活動団体にとっても重大な懸念がある。市民活動には、多様な価値観を持ち、崇高なミッションを掲げ活動しているものが多い。政府・行政ができないこと、取り組んでいないことなどに声を上げ、政策提案をしたり、社会に広く訴えるなど、運動体としての役割も持っている。特定秘密にアクセスできないことで、こうした市民活動の果たすべき使命に制限が加わることも考えられる。市民活動団体が委縮すれば、結局、政府に都合の良い団体しか生き残れなくなる。

 ここまで書くと、そんな心配は取り越し苦労だと一笑に付す人もいるだろう。確かに、法律ができたからといって、すぐに市民生活が脅かされるのではないかもしれない。しかし、このような前近代的な法律は、いつ牙をむくか分からないから怖いのだ。市民として、法案成立阻止に向けできることを精一杯努力することが必要だ。意見表明や反対署名、デモなど、すでに多くの団体が取り組んでいる。ツイッター、フェイスブック、ブログなどの利用もできる。一人一人は小さな力でも、自分が動かなければ変わらない。あきらめずにこの暴力に立ち向かいたい。
  


Posted by しがNPOセンター at 14:36シリーズ【阿部コラム】