2013年12月03日
特定秘密保護法に市民はどう向き合うか
しがNPOセンター 代表理事
阿部圭宏
政府が本臨時国会で成立にやっきになっている特定秘密保護法。この話を聞くだけで、あまり気分がよろしくない。こんな筋悪の法律がすんなり通るとは思っていなかったが、あれよあれよという間に衆議院を通過し、審議は参議院に移り、政府は今週中にも成立させたいと強引な国会運営を行っている。さすがに、11月末時点でのマスコミの世論調査では、反対が5割を超えるものも出てきており、マスコミも遅ればせながら、やっと声を上げ始めたという状況である。
法案が上程される前の10月初め時点での各社の世論調査では、産経の8割を筆頭に、軒並み法案への賛成や必要だとする意見は5割を超えていた。どうしてこんな法案に賛意が示されるのか、僕にとっては非常に不思議だった。多くの国民は法案の中身を知らないまま、「国家機密を漏らした国家公務員への罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案は必要か」と聞かれれば、誰でも必要と答えてしまうというのがこの世論調査の結果であろう。法案への反対や慎重審議の要請が増えたということは、やっと法案の曖昧さや危うさが市民に理解されるようになってきたと言える。
法案そのものは、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義という日本国憲法の三原則を踏みにじるものであり、多くの問題を抱えているが、ここでは、特定秘密の範囲と市民も処罰の対象となっていることに目を向けよう。「特定」というからには、一見、範囲を絞っているかのような感じを受ける。確かに法案別表では、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止として4項目を列挙しているが、これは何も特定秘密の範囲を限定しようとするものとは思われない。現に、「特定」という言葉を冠した「特定非営利活動促進法」(いわゆるNPO法)においては、特定の非営利活動に限定するという趣旨ではあるが、ほぼ何でも対象活動に該当するという運用が実際に行われていることからも、一旦できてしまった場合に、特定秘密が拡大される可能性は非常に高い。
それに加え、処罰の対象者が国家公務員だけでなく、広く一般市民も含まれることが恐ろしい。法案に賛成している人は、自分には関係ない、自分は与党議員だ、体制側にいるので大丈夫だと思っているかもしれないが、特定秘密かどうかが分からないままに特定秘密に触って、処罰されてしまうことも考えられる。
個人だけでなく、市民活動団体にとっても重大な懸念がある。市民活動には、多様な価値観を持ち、崇高なミッションを掲げ活動しているものが多い。政府・行政ができないこと、取り組んでいないことなどに声を上げ、政策提案をしたり、社会に広く訴えるなど、運動体としての役割も持っている。特定秘密にアクセスできないことで、こうした市民活動の果たすべき使命に制限が加わることも考えられる。市民活動団体が委縮すれば、結局、政府に都合の良い団体しか生き残れなくなる。
ここまで書くと、そんな心配は取り越し苦労だと一笑に付す人もいるだろう。確かに、法律ができたからといって、すぐに市民生活が脅かされるのではないかもしれない。しかし、このような前近代的な法律は、いつ牙をむくか分からないから怖いのだ。市民として、法案成立阻止に向けできることを精一杯努力することが必要だ。意見表明や反対署名、デモなど、すでに多くの団体が取り組んでいる。ツイッター、フェイスブック、ブログなどの利用もできる。一人一人は小さな力でも、自分が動かなければ変わらない。あきらめずにこの暴力に立ち向かいたい。
阿部圭宏
政府が本臨時国会で成立にやっきになっている特定秘密保護法。この話を聞くだけで、あまり気分がよろしくない。こんな筋悪の法律がすんなり通るとは思っていなかったが、あれよあれよという間に衆議院を通過し、審議は参議院に移り、政府は今週中にも成立させたいと強引な国会運営を行っている。さすがに、11月末時点でのマスコミの世論調査では、反対が5割を超えるものも出てきており、マスコミも遅ればせながら、やっと声を上げ始めたという状況である。
法案が上程される前の10月初め時点での各社の世論調査では、産経の8割を筆頭に、軒並み法案への賛成や必要だとする意見は5割を超えていた。どうしてこんな法案に賛意が示されるのか、僕にとっては非常に不思議だった。多くの国民は法案の中身を知らないまま、「国家機密を漏らした国家公務員への罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案は必要か」と聞かれれば、誰でも必要と答えてしまうというのがこの世論調査の結果であろう。法案への反対や慎重審議の要請が増えたということは、やっと法案の曖昧さや危うさが市民に理解されるようになってきたと言える。
法案そのものは、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義という日本国憲法の三原則を踏みにじるものであり、多くの問題を抱えているが、ここでは、特定秘密の範囲と市民も処罰の対象となっていることに目を向けよう。「特定」というからには、一見、範囲を絞っているかのような感じを受ける。確かに法案別表では、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止として4項目を列挙しているが、これは何も特定秘密の範囲を限定しようとするものとは思われない。現に、「特定」という言葉を冠した「特定非営利活動促進法」(いわゆるNPO法)においては、特定の非営利活動に限定するという趣旨ではあるが、ほぼ何でも対象活動に該当するという運用が実際に行われていることからも、一旦できてしまった場合に、特定秘密が拡大される可能性は非常に高い。
それに加え、処罰の対象者が国家公務員だけでなく、広く一般市民も含まれることが恐ろしい。法案に賛成している人は、自分には関係ない、自分は与党議員だ、体制側にいるので大丈夫だと思っているかもしれないが、特定秘密かどうかが分からないままに特定秘密に触って、処罰されてしまうことも考えられる。
個人だけでなく、市民活動団体にとっても重大な懸念がある。市民活動には、多様な価値観を持ち、崇高なミッションを掲げ活動しているものが多い。政府・行政ができないこと、取り組んでいないことなどに声を上げ、政策提案をしたり、社会に広く訴えるなど、運動体としての役割も持っている。特定秘密にアクセスできないことで、こうした市民活動の果たすべき使命に制限が加わることも考えられる。市民活動団体が委縮すれば、結局、政府に都合の良い団体しか生き残れなくなる。
ここまで書くと、そんな心配は取り越し苦労だと一笑に付す人もいるだろう。確かに、法律ができたからといって、すぐに市民生活が脅かされるのではないかもしれない。しかし、このような前近代的な法律は、いつ牙をむくか分からないから怖いのだ。市民として、法案成立阻止に向けできることを精一杯努力することが必要だ。意見表明や反対署名、デモなど、すでに多くの団体が取り組んでいる。ツイッター、フェイスブック、ブログなどの利用もできる。一人一人は小さな力でも、自分が動かなければ変わらない。あきらめずにこの暴力に立ち向かいたい。
Posted by しがNPOセンター at 14:36
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