2013年06月11日
市民活動という言葉の持つ意味
しがNPOセンター副代表理事の阿部圭宏のコラムを毎月掲載することにいたしました。
熱い思いを持って、あるいは長い時間、
市民活動を続けていると、自分の団体と活動を客観視できなくなりがちです。
時には少し立ち止まって考えるひとときをどうぞ。
コラムに対するご意見や、今後のテーマのご要望などもお寄せくださるとうれしいです。
スタッフH
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しがNPOセンター 副代表理事
阿部圭宏
特定非営利活動促進法(いわゆる「NPO法」)が施行されたのが1998年12月1日であり、今年は15周年の節目を迎える。この間、NPOという言葉は社会に広く浸透してきた。NPOが広がったのはNPO法が社会的に認知されたからだ。しかし、NPO法が議論されていた当時は、NPOという言葉よりも市民活動とか市民活動団体という言葉のほうが関係者の間では一般的であった。
NPOは一般的には民間非営利組織と言われ、公益法人をベースとしつつ、社会福祉法人や学校法人、生活協同組合などの法人に加え、法人格を持たない任意団体を含めた非常に幅広い非営利の団体を意味してきた。一方、市民活動団体は、法人格の有無に関係なく、社会的課題を解決するために、市民が自主的・自発的に立ち上げた非営利の団体のことである。したがって、市民活動団体はNPOの一部だと言える。
NPO法は法案提出時、「市民活動促進法案」という法律名で、一定の要件を備えた市民活動団体に「市民活動法人」という法人格を付与し、そのことで市民活動を促進したいという意図があった。国会での法案審議過程で結局、法律名も変わり、「特定非営利活動法人」という名称が与えられることとなり、法案に込められた市民活動の促進という目的が曖昧化されてしまった感がある。しかも、特定非営利活動法人という名称の分かりにくさ、使いづらさなどを理由として、いつしか「NPO法人」と呼ばれるようになってしまった。それと軌を一にするように、市民活動団体という言葉もNPOという言葉に置き換わってしまったように思われる。
NPO法人制度の運用においては、市民活動と言えないものもそこに含まれている。法律の目的には、「市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動」という言い方がされているものの、市民活動とは違ったものもNPO法人格を付与されている。市民活動以外の非営利活動が広がることが悪いということではないが、一つ押さえておくべきことがある。それは、われわれが推進したいのは市民活動なのだということである。市民活動が意味する市民の自発性、先駆性、多様性などの特徴、あるいは市民活動の持つ運動性は、市民活動という言葉以外に十分に社会へ伝えられない。市民活動はあくまで市民活動なのであり、これをNPO活動などとは決して言い換えられないのだ。市民活動という言葉にこだわることは非常に大切だと思われる。
熱い思いを持って、あるいは長い時間、
市民活動を続けていると、自分の団体と活動を客観視できなくなりがちです。
時には少し立ち止まって考えるひとときをどうぞ。
コラムに対するご意見や、今後のテーマのご要望などもお寄せくださるとうれしいです。
スタッフH
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しがNPOセンター 副代表理事
阿部圭宏
特定非営利活動促進法(いわゆる「NPO法」)が施行されたのが1998年12月1日であり、今年は15周年の節目を迎える。この間、NPOという言葉は社会に広く浸透してきた。NPOが広がったのはNPO法が社会的に認知されたからだ。しかし、NPO法が議論されていた当時は、NPOという言葉よりも市民活動とか市民活動団体という言葉のほうが関係者の間では一般的であった。
NPOは一般的には民間非営利組織と言われ、公益法人をベースとしつつ、社会福祉法人や学校法人、生活協同組合などの法人に加え、法人格を持たない任意団体を含めた非常に幅広い非営利の団体を意味してきた。一方、市民活動団体は、法人格の有無に関係なく、社会的課題を解決するために、市民が自主的・自発的に立ち上げた非営利の団体のことである。したがって、市民活動団体はNPOの一部だと言える。
NPO法は法案提出時、「市民活動促進法案」という法律名で、一定の要件を備えた市民活動団体に「市民活動法人」という法人格を付与し、そのことで市民活動を促進したいという意図があった。国会での法案審議過程で結局、法律名も変わり、「特定非営利活動法人」という名称が与えられることとなり、法案に込められた市民活動の促進という目的が曖昧化されてしまった感がある。しかも、特定非営利活動法人という名称の分かりにくさ、使いづらさなどを理由として、いつしか「NPO法人」と呼ばれるようになってしまった。それと軌を一にするように、市民活動団体という言葉もNPOという言葉に置き換わってしまったように思われる。
NPO法人制度の運用においては、市民活動と言えないものもそこに含まれている。法律の目的には、「市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動」という言い方がされているものの、市民活動とは違ったものもNPO法人格を付与されている。市民活動以外の非営利活動が広がることが悪いということではないが、一つ押さえておくべきことがある。それは、われわれが推進したいのは市民活動なのだということである。市民活動が意味する市民の自発性、先駆性、多様性などの特徴、あるいは市民活動の持つ運動性は、市民活動という言葉以外に十分に社会へ伝えられない。市民活動はあくまで市民活動なのであり、これをNPO活動などとは決して言い換えられないのだ。市民活動という言葉にこだわることは非常に大切だと思われる。
Posted by しがNPOセンター at 10:22
│シリーズ【阿部コラム】
この記事へのコメント
こうして先輩方が語っていただくと、先の見えない不安とともにある若輩としては、自分の立ち位置を確認するための座標軸として参考になります。
Posted by ねぎやま at 2013年06月11日 19:14
私は、市民運動、ブレーキングバリアを続けてきました。別に法人でも法人でなくてもいいのです。阿部さんの文末の部分と言うか、そこへのこだわりこそが大事だと思います。どうも、最近、フロントランナーと目された人々がおかしくなってきているように思うのは私だけでしょうか?
Posted by 桑原英文 at 2013年06月11日 23:05
根木山さま、桑原さま
阿部です。コメントありがとうございます。ご意見をいただくと励みになります。
阿部です。コメントありがとうございます。ご意見をいただくと励みになります。
Posted by 阿部圭宏 at 2013年06月12日 15:39