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2019年07月01日

新書で読み解く平成時代とは

           しがNPOセンター
                     代表理事 阿部 圭宏

 昭和から平成への移行は一億総自粛、今回の改元時はお祭り騒ぎ。いずれの現象にも違和感を持ちつつ、西暦が一般に使われる中での和暦使用の意味は何なのだろうと改めて考えさせられる。と言いながらも、改元による時代の括りというものが一種の流行になっているのは確かだ。かつては、明治・大正・昭和という時代を日本の近代化の中から分析するようなことが行われてきたし、今回も書店へ行けば、「平成史」の名の付く書籍が店頭に並ぶ。

 歴史を一言で言い表すことは難しいし、時代が進むことにより、歴史評価も変わる。実際、筆者が中高生時代に習った歴史と今の教科書では違うことが書かれていることもよくある。それは歴史研究が進んだ成果でもあるが、時代によっての見方や評価の変化も大きいからだ。同様に、平成という時代を一括りにして論じてみても、現時点の時代の一つの見方でしかないことをことを断った上で、平成時代は、この国がバブルの絶頂期から衰退期に向かって進んできた時代だったと言えるかもしれない。この30年間、経済は停滞し、政治も劣化し続けていることに加え、自然災害が頻繁に発生してきた。

 平成時代を各人が総括し、次代をどのように考えるのか。参考となる新書5冊を紹介したい。

 まず、天皇制である。原武史『平成の終焉–退位と天皇・皇后』と伊藤智永『「平成の天皇」論』の2冊は、ともに2016年の天皇のビデオメッセージ「おことば」から論を展開している。二人の切り口は同じとは言えないが、ともに深い考察となっている。日本国憲法の中で象徴とされた天皇制を明仁天皇(現上皇)はどのように考え、実行してきたか、退位への決意や皇位継承問題などにも鋭く切り込み、政治との軋轢、民主主義と相性のよくない天皇制を今後どうしていくのかを考えさせられる。

 あとの3冊は政治についてである。1冊目は、中北浩爾『自公政権とは何か–「連立」にみる強さの正体』を取り上げたい。90年代からの政治改革の流れ、非自民政権、自社さ政権、自自公から自公政権、民主党政権、政権復帰後の自公政権という一連の流れを概観しつつ、なぜ、この連立政権が強いのかを多角的に分析している。

 2冊目は、三春充希『武器としての世論調査−社会をとらえ、未来を考える』である。筆者は、11の新聞社、通信社、テレビ局が毎月実施している定例世論調査を分析しながら、その実態を分析している。国政選挙の投票動向を日本地図に落とし込んで可視化もされている。政治参加の重要なファクターとして選挙があり、世論調査の積極的な活用が可能だと説く。政治への信頼を取り戻すことが支持を上げることにつながる。

 3冊目は、明石順平『国家の統計破壊』である。厚生労働省の毎月勤労統計調査での不正が発覚した。これにより、賃金が上振れしていたというのだ。本書は、不正はそれだけでなく、実質賃金の伸び率が隠され、さらにはGDP算出基準がが勝手にいじられ、アベノミクスがさも成功しているのではないかと思わせるような偽装が行われている状況を詳しく分析している。
 
 混沌とした時代だからこそ、自分の意見を持ち、しっかりと発言していくことが大切だと思う。ぜひ、お読みいただきたい。

『平成の終焉–退位と天皇・皇后』原武史著(岩波新書、2019年3月)
『「平成の天皇」論』伊藤智永(講談社現代新書、2019年4月)
『自公政権とは何か–「連立」にみる強さの正体』
中北浩爾著(ちくま新書、2019年5月)
『武器としての世論調査−社会をとらえ、未来を考える』
三春充希著(ちくま新書、2019年6月)
『国家の統計破壊』明石順平著(インターナショナル新書、2019年6月)



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Posted by しがNPOセンター at 09:27 │シリーズ【阿部コラム】