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2015年04月06日

ピケティから何を学ぶか

           しがNPOセンター 代表理事
                                 阿部圭宏  

 フランスの経済学者トマ・ピケティが注目をされている。昨年末に販売された「21世紀の資本」の日本語版は、発売1カ月で13万部という驚異的な売れ行きを記録したそうだ。本文だけで600ページ、原注を入れると700ページにも及ぶこの経済専門書は、所得格差を長いスパーンで比較し、資本収益率(r)>経済成長率(g)という不等式が成り立っており、これが資本主義社会での格差を生み出していると言う。富める者は、ますます富むという仕組みを是正するために、資本への累進課税による富の再配分を主張するピケティの考え方は、特にシカゴ学派を中心とした新自由主義的な考え方に真っ向から立ち向かうものである。ピケティの主張は、世界的な不平等、格差に対する明確な対抗軸となっている。

 フランスと言えば、ポストモダン思想家や哲学者などは広く紹介されてきたが、これほどまでに経済学者が注目されることはなかったと思われる。新聞各紙でも「21世紀の資本」については多くの記事が書かれ、経済学者による書評も数多く出されている。この1月には来日を果たしており、ピケティ現象とも呼ぶべき状況が起こっている。

 来日に合わせて出版された「トマ・ピケティの新・資本論」という本がある。これは、リベラシオン紙に連載されていた時評をまとめたもので、フランスの政治経済、EUについて書かれたものが多い。日本との制度の違いもあるものの学術書ではないため読みやすい。フリードマンやサルコジに対する厳しい眼は当然のこととして、社会党に近い立場であるにもかかわらず、現大統領オランドに対しても舌鋒鋭く切り捨てる。さらに、リベラシオン紙の経営危機に対する大株主の傍若無人ぶりを批判するなど、その主張は明確であり、思わず読みいってしまう。

 ピケティが提起した問題は、これからの日本のあり方を考える上で非常に重要な視点を示しているように思われる。経済的格差を生むような政策に対してどのような対抗軸を持てるのか、そのための政治勢力をどのように育てるのかということを真剣に考えていかなければならない。あわせて、政権に媚を売らない健全なジャーナリズムを育てていくことも重要だろう。

※東大テレビでピケティの講演を見ることができる。
   http://todai.tv/contents-list/events/piketty/capital-21c



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Posted by しがNPOセンター at 10:43 │シリーズ【阿部コラム】